こんにちは。
最近いつも黒い服を着ている担当Aです。
上から下まで真っ黒な装いで黒子みたいな私ですが、
昔は、足元から頭まで派手な色を纏うのが好きだったんですよ。
同世代の方は懐かしいと思っていただけるかと思うのですが、
2008年、2009年の大学生くらいの時にカラータイツが大流行しました。
当時の私は美大生。
私も同級生たちも流行に乗って個性的なカラーのタイツを選んで穿いていました。
美大生だから色彩感覚は奇抜な十人十色!!
選ぶカラーも勝負色!!
私はオレンジのショートパンツにカラータイツ履いてたので、今思うとすごくダサいですね。
髪の毛も赤色だったので、派手というより、
目が痛い、、、、
私達のファッションは、傍から見れば学生というより陽気なサーカス団のように思われていたかもしれません。
今となれば黒歴史ですが、当時はそのダサさが独特の美で青春でした。
今は、子どもがゲボゲボしても、抱っこして靴の裏の砂がついてもイライラしない、母の戦闘服『黒』で日々を過ごしています。
年も取って落ち着き、黒子ファッションも結構気に入っています。
黒の他によく身につける色は『グレー』や『白』の無彩色カラーです。
グレーと言えば、灰色や鼠色など様々な言い方がありますよね。
なかでも『鼠』は、『〇〇鼠』のような呼び方で多くの色が作られています。
なぜ鼠の文字が付く色が多いのでしょうか、、、
今回のブログでは、粋なカラーとされる『鼠色』ついて記事にしました。
鼠色の歴史を楽しんでいただけましたら幸いです。
遡ること300年前の江戸中期。
鼠色はこの時代に流行したと考えられています。
鼠色の流行には、庶民の贅沢を禁止する『奢侈禁止令(しゃしきんしれい)』という法令がたびたび出されていることが影響しているようです。
この法令を簡単に、
会話風にいうと、、、
『贅沢は身を滅ぼすから辞めろ!服は木綿や麻の素材にしろ!』
『紅色なんて派手な色は禁止だ!鼠色か茶色のような地味な色の服を着ろ!!』
という衣類について細かく指示する内容の法令です。
衣服の色まで制限されるなんて、、、
自分だったら発狂するかもしれません。。
しかしここから町人たちの工夫は始まります。
鼠色や茶色の地味な色に、赤を含ませたり、青を含ませたりと、
ベースの色に様々な色を混ぜ合わせて、派生色を作るようになっていきます。
町人たちの工夫により、
僅かな色の変化を「粋」として楽しむようになり、
庶民の中で独自の美意識が発達していったと考えられています。
「大変多くの茶色と、大変多くの鼠色」を表す言葉として、
「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」という言葉もこの時代に誕生しています。
紅色を禁止しているのに、鼠色の中に紅色を混ぜ込んで流行らせるところ、
江戸町人の困難にも屈しない負けん気みたいなのが感じられて、すごくかっこいいですよね。
『鼠』が付く色が多く残っているのは、法令に対抗しようとした証のように思えて、とても興味深いです。
また、灰色ではなく鼠色という言葉が使われているのは、
『火事と喧嘩は江戸の花』と言われるほど火事が多発した時代だったため、焼け跡を思わせる『灰』の字を避けるようになり、代わりに『鼠』の字が使われたようです。
鼠色ベースの色を調べてみますと、ほんとに多くの派生色が作られています。
ここからは、歴史の中で作られた鼠色ベースのカラーをご紹介します!!
●銀鼠(ぎんねず)●
粋とされた色の一つで、銀色のようなほんのり青みを含んだ明るい鼠色です。
別名は錫色(すずいろ)で、白色系統の色に分類されます。
銀から感じる光沢のイメージと上品な雰囲気が美しいカラーです。
●梅鼠(うめねず)●
赤みのある鼠色です。
「梅」の文字は紅梅の花を表していて、赤を表す形容になっています。
梅の特産地である「豊後」にちなんで「豊後鼠(ぶんごねず)」と呼ばれることもあります。
ちなみに豊後は現在の大分県のことです。
●藍鼠(あいねず)●
暗い青みのある鼠色です。
広く愛された色の一つで、「相生」という縁起の良い言葉にかけて『藍生鼠(あいおいねず)』と表現されることもあるようです。
相生とは、
「夫婦が共に長生きすること」
「一緒に生まれ育つこと」
「一つの根から二つの幹が分かれて伸びること。また二つの幹が一緒になること」という意味があります。
健康や大切な人を想う気持ちが込められた深い色です。
●小町鼠(こまちねず)●
ほんのりと赤みを帯びた淡い鼠色です。
最初にご紹介した、銀鼠よりも淡い色合いになっています。
薄い鼠色ということであまりぱっとしない色ですが、美人の代名詞である『小野小町(おののこまち)』を連想する色名になっていることで若者の間で流行したようです。
美人の娘に対して〇〇小町という呼び方もこの時代に登場しています。
●利休鼠(りきゅうねずみ)●
緑みかかった中明度の鼠色です。
色が抹茶のような緑色であることから、桃山時代の大茶人、千利休(せんのりきゅう)にちなんで名付けられたと言われています。
名前から風流で高尚な色として扱われたようです。
『侘び寂び』の精神を期待してしまうような洗練された印象です。
●藤鼠(ふじねずみ)●
藤色を鼠色ぽくさせた青紫です。
柔らかい印象と落ち着いた雰囲気で、婦人の着物の色として好まれたようです。
江戸以降の明治・大正時代にもたびたび流行した人気色です。
●鳩羽鼠(はとばねずみ)●
赤みがかった灰紫色で、鳩の羽に例えられてこの名前が付けられたようです。
老婦人にも人気の色で、高級感と品の良い感じがとてもお洒落です。
鼠色の派生色の中でも特に人気があった色の一つのようです。
●深川鼠(ふかがわねずみ)●
青緑みのある明るい鼠色です。
深川は東京にある現在の江東区にあたる場所の旧区名です。
江戸時代に起こった『明暦の大火』と呼ばれる大火災後、江戸の深川では庶民的な歓楽街が作られています。
木材商が多く集まり、力仕事をする人たちも多く、男気あふれる場所になっていました。
華美を嫌い渋さを好んだという深川の芸者に好まれ流行した色です。
この他にもまだまだたくさんの色が誕生しています。
江戸庶民がこのような色合いを着ていたと想うと、少し江戸の生活に触れたようでうれしいです。
色名を見ていると、
地名や歴史上の人物など様々なものと組み合わせることで鼠色のイメージを広げていったように感じます。
この時代を彩った鼠色の歴史はいかがだったでしょうか。
困難を楽しさに変えていったこのストーリーに、なんだか励まさたような気持ちになります。
いつの時代も、少しの『工夫』によって助けられたストーリーがよく存在していますよね。
私達ももっと『ワクワク』を作るために、
この時代にできる『工夫』を探していきたいです。
参考文献
『とりあわせを楽しむ 日本の色』 著:コロナ・ブックス編集部編
『日本の伝統色』 著:コロナ・ブックス編集部編
『和の色手帖』 著:石田純子