カンプとは何か?
印刷業界やデザイン制作の現場でしばしば耳にする「カンプ」という言葉。
これは Comprehensive Layout(コンプリヘンシブ・レイアウト)を省略した用語で、
日本語に直訳すると「包括的なレイアウト」、つまり全体的なデザインの確認をするための見本のことを指します。
大量の印刷が終わったあとの不備や、出荷・納品したあとのトラブルなどを防ぐためにも、
印刷工程に入る前に、デザインのレイアウト全体を俯瞰して確認することは非常に重要です。
そこで登場するのが「カンプ」です。
デザインを作成するときには、まず企画・提案からどんなデザインにするかラフ(大まかなレイアウトの案やスケッチ)を考えます。
ラフで方向性を決めたら、そこから具体的なデザイン案を作っていきます。
この、デザイナーがクライアントに提示するためのデザインイメージの見本がカンプに当たります。
カンプが必要とされる理由
デザインや入稿データは、画面上では綺麗に見えても、実際に紙に印刷したり、
他人の目でチェックしたときに思わぬ誤りや違和感が見つかることが少なくありません。
クライアントと制作側での認識を合わせるために、制作側がデザイン案のカンプを作成してクライアントに提示し、
確認と修正を重ねながら最終的な完成イメージとなる見本を作っていきます。
例えば、
- この部分の色は黒ではなく青に変えたい
- ロゴは目立たせたいからこの位置がいい
- この画像はこっちに差し替えたい
- 所在地と連絡先はA支店だけでなくB支店のものも載せたい
などなど、カンプを元に配置する情報やデザインを精査し、
最終的な完成形デザイン案までブラッシュアップさせていきます。
実際にカンプが使われるシーン
印刷物の種類や用途によって、カンプが活用されるシーンはさまざまですが、
いずれもクライアントと制作者の間でデザインのイメージを擦り合わせるときに使われます。
- 広告代理店や制作会社がクライアントに提案する段階
- 役員や広報担当が印刷物の確認を行うとき
- 展示会・イベント用のツールを制作するとき
- WEBデザインの現場では、コーディングに入る前にデザインを固める段階
- 大量印刷を行う前(大まかな流れは、カンプ確認→校正→校了→大量印刷)
など、本番に向けた作り込みや大量印刷に入る前に、
双方でどんなデザインに仕上げたいのかカンプを見ながら共有することで
内容確認やイメージの擦り合わせを行い、修正を加えながら完成見本に近づけていきます。
カンプと校正刷りの違い
カンプと混同されやすいのが「校正刷り」です。ゲラやプルーフと呼ぶこともあります。
両者は似ているようで、実務上の役割は全く異なります。
カンプ
全体的なデザイン見本のこと。
どこにどの色を使うのか、文字や画像の内容・配置や書体はどうするといった、
デザイン全体のレイアウトを俯瞰的に確認するためのもので、主にオフィスプリンター出力やPDFで作成。
特にwebデザインにおけるカンプは、画面上での確認が重要となるため、PDFなどのデジタルカンプがメインになります。
校正刷り(ゲラ/プルーフ)
実際に印刷したときの色味や、文字の場合は誤字脱字や意図しない空白がないかなど、
画面上では確認しきれない、印刷物としての品質を確認するための出力。
色校正の簡易校正は専用プリンター、本機校正は本番用の印刷機を使って行う。
簡易校正用のプリンターは色調整(カラーマネジメント)で本番に近づけて確認をするが、
本番用の印刷機とは違うものなので、色味に若干の差異は発生する。
※印刷の出力は、日々の温度・湿度や機械のコンディション、人の目によっても異なるので、
同じ機械を使っていても完全に同じ色になることはありません。
そのため、印刷会社はカラーマネジメントによって極力近い色になるよう調整しています。
カンプはあくまで「デザインの見本」であり、「実際に印刷したときの色の確認見本」ではありません。
デザイン見本ができたら、次は校正刷りで色味を確認したり、細かい誤字脱字などがないか確認する流れになります。
カラーマネジメントとは?
印刷機、プリンター、モニターには、各機器ごとに出力した色のクセのようなものがあるため、色の見え方にばらつきが出てしまいます。
異なる機器で出力したときに、極力近い色で印刷できるように、色の基準を設定・調整することをカラーマネジメントといいます。
名刺良品でも、毎日商品となる名刺を印刷する前に、各機器でその日のカラーマネジメントを行っています。
おわりに
いかがだったでしょうか?
よく耳にはするものの、どんな意味なのかいまいちピンと来ない方も多い「カンプ」という用語。
デザイン制作から印刷物ができるまでの大まかな流れの中で見てみると、
最初の企画・デザイン案の作成段階で登場するのが「カンプ」、
印刷用のデータを作成したあとに行うのが「校正」
というようにに覚えておくと分かりやすいかもしれません。
「カンプ」は、特にデザイン制作を依頼するような場面ではよく登場する言葉です。
校正との違いや工程も把握しておくと、よりやりとりがスムーズに運びやすくなるほか、
認識の違いによるトラブルなども回避しやすくなるので安心です。
依頼をする側とされる側で、お互いに納得した成果を得るためにも、
用語の意味をおさえて、制作の場面で活用していきましょう。